資産運用をしていると、良く聞く投資手法があります。その内の一つが「ドルコスト平均法」です。共に「定期的」に「同じ額」を支出することで、リスクを低減できるとしている投資手法です。
しかし、突き詰めて考えていくと、広く知られていることには誤りが紛れています。そして、本質的に利用できない状況においても、使用を推奨している人が多いことに気づきます。この記事では、「ドルコスト平均法の本質」について言及し、使うべきではないことを説明します。
そして、投資の原則に立ち返って、「誰でも出来る、実際に取り組むべき投資方法」について言及します。この記事を読むことで、より良い投資判断が出来るでしょう。
それでは説明を始めていきます。
こんな方におすすめ
- ドルコスト平均法に疑念を持っている方
- ドルコスト平均法の本質を知りたい方
- 本来の資金投入方法について知りたい方
ドルコスト平均法とは?
ドルコスト平均法とは、その名の通り、「ドルのコスト(ドル価格)」を平均化する方法を示します。
平均化というのが難しい所ですが、「時間変動するものを平均化する」という目的で、「複数回に分けて購入すること」により、平均的な価格取得する手法であると言えます。例えば、「100ドル欲しい場合に、10ドル購入を10回行う」というケースであったり、「10000万円分の外貨が欲しい場合に、1000円購入を10回行う」という形で実施します。後者のケースであれば、定額購入であり、「安い時に多く買う」ということです。これは、定額の積立投資と同じように見えます。
これらにより、取得価格を平均価格に近付けることが出来ます。この平均化により、為替リスクを低減する、というのがドルコスト平均法の基本です。
本来のドルコスト平均法の姿
ドルコスト平均法の投資方法を確認すると、「時間的に分散して」投資を行う、ということで、積立投資と似たような投資法に思われるかもしれません。しかし、ドルコスト平均法について深く考えていくと、違う姿が見えてきます。
元々は定額積立投資と違った説
ドルコスト平均法については、自分の通貨(円)とドルのどちらを起点として考えるかで二つのパタンがありました。ですが、本来のドルコスト平均法は「100ドル欲しい場合に、10ドル購入を10回行う」という物を指していたではないでしょうか?
原文が分からなかったので、確固たることを言えませんが、「ドルコスト平均法」の意味としては「ドルの費用を平均化」を示しています。ですから、「ドル購入費用の平均化」ということで、「必要なドル」が先に立つケースを指していると考えるのが自然です。
この様にドルが先にあると、「きれいに単純平均になる」のです。定額の積立投資では「逆数の平均になる」ので単純平均にはなりません。
本来の目的とメリット
次に、ドルコスト平均法の本来の目的とメリットについて考えてみましょう。
ドルコスト平均法は、名前から考えれば「為替リスク」をヘッジする目的で実施する手法であると言えます。思想としては、名前から想像することが出来るように、「ドル円価格を平均化」し、変化を滑らかにすることでリスクを減少させることでしょう。実際に、過去から将来に渡って、無限期間平均化できるならば、「定額になる」わけで、「為替リスクはなくなる」わけです。「為替リスクを抑制すること」がドルコスト平均法を実施する本来の目的です。
ただ、実際は、有限の期間で平均化するのが限界です。ですから、ドルコスト平均法による為替コストの平均化には限界があります。本質的には平均額で取得する手法ですから、期間が有限の場合に理想とする相場は長期に渡るボックス相場でしょう。実際、円とドルの為替相場はある程度安定しており、80円~130円の範囲のボックス相場と考えることも出来ます。ですから、ドルコスト平均法を使用することで、「ある程度為替リスクを抑制出来る効果」が期待できますから、為替リスクの観点でメリットがあると言えます。
投資におけるドルコスト平均法の欠点
投資において、ドルコスト平均法に基づく投資では、致命的な欠点があります。それを説明しましょう。
まず、ここでいうドルコスト平均法の投資方法は「投資対象に対して、一定の期間、定額投資を実行すること」とします。この場合のドルコスト平均法のメリットとは一般的に「大きな損失を回避すること」と言われています。つまり、初回購入直後に価格が下落した場合、ドルコスト平均法を採用していたおかげで、平均購入価格は下げられる、というのがメリットということです。つまり、損するリスクが低減された、という説明がなされます。しかし、本当にこれは「リスクが低減された」ということを意味するのでしょうか?
実は、ドルコスト平均法と称して、「一定期間の定額投資」を実施することには合理性があるとは言えません(メリットよりデメリットが目立つ)。
その理由として挙げられるのは、以下の3点です:
- 定額投資期間が終わった直後に暴落するリスクからは逃れられない
- 現物としての投資では正の利回りが長期的に期待され、暴落を想定するのは分の悪い賭けになる
- そもそも金融商品の変動リスクは変わらない
といったものです。なお、ここでは「現物投資」を仮定しましたが、「信用取引」でも本質的な状況は変わりませんので、適宜読み替えて下さい。
一方、明確なメリットとなるのは、「購入している最中に暴落し、購入終了後に高騰した場合」だけです。ただ、下落局面で定期の定額投資を行っても、額面の値下がりには追い付けないため、機械的な投資手法としては使えません。つまり、買い時を考えないといけない訳で、優秀な投資手法とは認め辛いです。
結局、「暴落直前に買わなくてよかった」という人間心理的なメリットが大きい投資手法、ということになります。
すべき運用:リスクを制する者が投資を制す
以上により、ドルコスト平均法の様な平均化を狙う投資手法というのは、正の利回りを期待する金融商品の購入に適しません。あくまで、「ある程度の範囲に収まっている為替のリスクヘッジ」に使うのに適した手法であると言えます。利益を出すのに適した手法ではなく、損も得もしないことを狙う手法ということです。
それでは、実際にはどのような投資手法を採用すべきなのでしょうか?
基本的な考え方
このような複雑な問題をシンプルにする方法は原理・原則に立ち返ることです。投資の基本原則とは何だったでしょうか?
それは「許容リスク内で投資を行うこと」です。元々、「ドルコスト平均法」で何をしたかったのかといえば、リスクを抑制し、許容リスク内に収めたかった、という訳です。結局、「許容リスク内で運用」が出来れば良いのであって、ドルコスト平均法の名の下に一定期間の定額購入をする必要は一切ないと言えます。
実際の投資手法について
リスク許容度などの要因を踏まえ、自分で決定した投資割合があるはずです。投資対象に資金を投入した後に、その割合になるように調整して一括投資をすれば十分です。簡易的には、目標としている投資割合で投資資金を分割し、分散投資しても構いません。万一、多少のバランス崩れは、定期的なリバランスによって補正するでしょうから、バランスを崩しすぎないことが重要です。
逆に、許容リスクを踏まえていないと、適切な運用が出来ないとも言えます。今一度、自分の適性リスク・許容リスクについては確認しておくことがおすすめです。
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おわりに
一般的に言われている「ドルコスト平均法」の活用方法には大変大きな誤りがあり、誤解している方も多いでしょう。実際、自分の周りにもそういった考えをしている人が多くいる印象です。しかし、記事で説明した通り、株式などの金融資産に対する投資としてはあまりメリットがない手法であり、注意を要するため、この記事を書きました。
今回のポイントは以下の通りです。
今回のポイント
- 今のドルコスト平均法は本来の形ではない
- 値上がりを期待する銘柄へのドルコスト平均法の適用はメリットがない
- リスクを元にした投資が基本
最終的に投資は自己責任ですから、「ドルコスト平均法」を使うのも良いでしょう。ただそれでも「リスクに対する考え」だけは忘れずに投資をするのが重要でしょう。