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投資初心者向け投資のやり方ガイド:資産運用理論編

こんな方におすすめ

  • 投資を始めようとしている初心者
  • 投資の基本的な方法や考え方を知りたい方

はじめに

投資をしようとしている時、何から学んだら良いのか、中々分からないと思います。自分も以前はそうでした。そういった自分の経験をもとに、初心者が知っていた方が良いことをまとめました。

この記事で、初心者であっても、「投資の根幹を知り」「運用の基礎を学び」「投資のスタートラインに付く」ことの手助けになるはずです。

少し長いですが、是非、お付き合い下さい。

前提として知っておくべき基本

資産運用とギャンブルの違い

資産運用はギャンブル、そう思っている方はいませんか?似ているように見えますが、この二つは全く異なるものです。

ギャンブルとは「勝者」「敗者」がはっきりしています。一方で、資産運用は「全員が勝者」という事態があり得ます。ですから、資産運用とギャンブルは全く異なるものです。

ゲーム理論では「ゼロサムゲーム」と「プラスサムゲーム」という言葉を使います。得た点数をプラス、失った点数をマイナスとして扱ったとします。そして、参加者全員の点数を合計した時、0になっている時が「ゼロサム」、0より大きい時「プラスサム」となります。プラスサムゲームでは全員が勝者となりえます。そして、資産運用は「プラスサムゲーム」なのです。

この「プラスサム」は即ち経済成長を意味しています。経済成長することで、プラス部分が大きくなり、皆が恩恵を受けられるようになるわけです。そして、資産運用とは、経済成長に投資という形で貢献し、その恩恵を受ける様な資産の使い方を指しています。よく言われる、「資産運用=お金に働かせる」というのは、こういった部分から来ていると考えて良いでしょう。

利回りとリスク

全員が得をする可能性があるとは言え、「自分が損をするのは避けたい」というのが人間心理ですから、安定的に高い利益を得たい、という心理が働きます。

しかし、そのような取引は市場で定常的には続きません。より良い条件で取引を申し出る人が出現し、最終的に妥当で適正な価格に収束するからです。その結果、基本的には高利回りと低リスクは両立しなくなります。勿論、多くの参加者に見過ごされているケースもありますが、大体はすぐに是正されることになりますから、そのような価格での買い付けは難しくなります。

とにかく、リスクと利回りの間に相関関係があり、都合の良い物を買うのは基本的には難しい、ということさえ、基本として把握しておけば良いです。

採用すべき金融商品

金融商品には様々な種類がありますが、初心者が購入すべき金融商品としておすすめ出来るのは、パッシブ運用として知られる「インデックスファンド」のみです。このインデックスファンドは、市場の平均的な利回りを目標とする金融商品ですが、平均的な運用利回りというのは驚異的であり、「平均的なのに勝ち組」とも言われる投資手法になります。

インデックス投資は、平均的な利回りなので、高い利回りを持つわけではありません。しかし、様々な銘柄への分散投資が実現され、資産価値が0になるリスクは少なく、それでいて平均的な利回りが得られる、というのは初心者にピッタリです。勿論、デメリットはあるのですが、それを補って余りあるメリットでしょう。逆にアクティブファンドと呼ばれる、積極運用されるタイプについては、ファンドマネージャのスキルが如実に表れるので、初心者にはおすすめしづらいのが現状です。

なお、インデックス投資は「投資するインデックスの種類の選定」が非常に重要となります。ただ、この記事では、「日本株式」と「全世界株式」を基本的な投資対象として考えています。詳しくは、その時になったら説明を入れますので、確認して下さい。

投資の目的と目標を確認する

投資初心者が何から始めるべきかと言うと、投資の目的の確認です。投資はリスクが有り、自己責任の世界なので、趣味や仕事でなければ、必要以上に足を踏み入れる必要は有りません。そして、その目的のためにはどういった目標が必要か考えてみましょう。

例えば、以下のような目的や目標金額が考えられます。

  • 老後資金:60歳で2000万円
  • 子供の教育資金:子供が15歳で500万円
  • 住宅購入資金:10年後に1000万円

それでは、こういった目標を立てた場合に、どのように投資を進めるか、確認していきましょう。

許容リスクの割合と資産割合の決定

まずは、許容リスクの割合を考え、資産割合を決定していきます。つまり、投資用資金に対し、何割を低リスク資産で保有するか、を決める、ということです。

まず初めに、リスクについて取り上げたのは、投資にはリスクが付き物であり、リスク管理が最重要であるともいえるからです。リスク管理を間違うと、投資家として残れないばかりか、逆に負債を背負う事にもなりかねない、ということで、適正なリスクを考えることから始めるべきです。

リスク資産割合の決定

まずは投資する資産を「リスク資産」「非リスク資産」に分け、それぞれの割合を決めましょう。これにより、資産の割合だけでなく、得られるであろう利回りもある程度決まってくることになります。

割合の決定方法は「簡易法」と「リスク許容度から決定する方法」の二つがあり、以前の記事で詳細を解説しました。どちらを採用しても良いのですが、ここでは簡易法を採用したと考えて話を進めましょう。

参考適正なキャッシュポジションの計算方法:非リスク資産の比率と基準

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簡易法を採用した場合、非リスク資産の割合を年齢と同じ割合にすることになります。例えば、30歳の人であれば、投資資金の内、7割をリスク資産、3割を非リスク資産に投資することになります。非リスク資産は広義には債券などの低リスク資産を入れても良いのでしょうが、個人的には、一般投資家は現金で保有して良いと考えています。この辺りは最後は好みで決めて大丈夫でしょう。

資産割合詳細の決定

次に資産割合の詳細を決定しましょう。

とはいえ、解はそれこそ無限に有るので、初心者向けの組み方を紹介しましょう。まず、資産の種類は極力減らして、見通しを良くします。そのために、

  • 利益部分は株式に頼る
  • 債権は入れず、現金で低リスク資産を保有する

というのを基本にします。

理由はいくつかありますが、正直、初心者に様々な資産の価格とその関係性を理解して貰うのは困難だからです。また、債権はどうしても利回りが取れないですから、それくらいなら現金を持って良いという判断をしています。勿論、債券・株式・金利の関係性を理解して投資するなら、勿論それも良い選択肢です。ただ、それが出来る人は初心者ではないでしょう。

次に利益部分を株式に頼る、というのは、REITなどの不動産を入れない、という意味でもあります。不動産投資は一般的な投資であり、分散投資のためにはREITも組み込むべき、という考えはあるのですが、今回は除外します。実際のところ、株式が最もリスクが高くなると同時に、高い成長性を持つので、初心者はそこに注力するのが分かりやすいです。

さて、株式に投資をすることを前提とすると、日本株式と全世界株式のどちらにどの程度投資するか?を決定する必要があります。次に、この日本株の比率について考えてみましょう。

日本株の比率について

日本株と海外株式の比率については、これも諸説あります。取る立場によって、比率は変わってきますが、「国別の時価総額に着目する方法」「為替の変動リスクに着目する方法」「資産を単純に1;1で分ける方法」といくつか考えられます。

リスクというものに着目すると、為替変動リスクは非常に大きな物がありますから、為替変動リスクで海外株式の割合を決定する、というのが良いでしょう。。つまり、円-ドルの為替レートが80円~120円まで動くと想定するのであれば、100円を中心に20%程度の為替変動が起こりうるわけです。もし、全資産を海外株式で保有する場合、これはドル建ての資産でしょうから、直接-20%~+20%の変動が起こる可能性があります。そこで、為替レート変動の許容度を10%と想定するのであれば、海外株式の比率は50%以下とすべきでしょう。

もちろん、この範囲を限定すれば、海外株式の比率を引き上げる結果になります。100円~120円で動くとすると、10%程度の変動が起きるわけですから、海外株式の比率を70%程度に高めても-7%~+7%の範囲に収まります。海外株式の方が日本株式より利回りが高い傾向がありますから、リスクと利回りのバランスを考えて決定する必要があるでしょう。

なお、各利回りですが、世界株式投資で4.9%の利回り、日本株式投資で3.3%と考えることを個人的には推奨しています。なお、この利回りはインフレ率を除いた実質利回りですから、現在の金銭感覚で判断するにはこれぐらいの値を使うべきでしょう。

この辺りは、積み立て投資のシミュレーションに関連して、記事を書いたので、興味があれば参考にしてください。

参考積立NISAとiDeCoのおすすめシミュレーション方法

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投資計画の草案を策定をする

次に投資計画の草案を作って行きましょう。投資計画と言っても、ここで確認するのは次の4点です。

  • 元手の確保方法
  • 投資期間
  • 利回り
  • 想定到達額

それぞれ解説していきましょう。

元手の確保方法

資産運用とは元手があってこその行為です。どの様に元手を確保するかは非常に重要です。

投資において、目標額を達成するための方法は三つしかありません。利回りを改善する、運用期間を延ばす、元手の金額を増やす、の三つだけです。そして、投資期間の決まっている投資においては、利回りを改善するか、元手を増やすかの二択しかありません。

始めに説明した通り、利回りを引き上げるためには、リスクを取らなければいけません。リスクをとるということは、資産がマイナスになる可能性を受け入れる、という事になります。この場合、安定性が失われることになります。失敗しても良い運用であれば、そういった選択肢も一つですが、子供の学費であったり、老後資金であったりは失敗することは(通常)許されません。そういった理由から、リスクを抑える必要がありますから、元手を十分に確保して、シミュレーションし、現実的な運用をすることが大切です。

こういった目的のある投資においては、「月々いくら投資する」といった「積み立て投資」の考え方が適切でしょう。ですから、元手としては、「月額いくら」といった形で計画するのが良いでしょう。もし、ボーナスなども割り当てるのであれば、12で割って、「平均月額」にしてしまうと、計算が簡単になっておすすめです。

投資期間

期間が長くなればなるほど、資産運用としては有利です。なぜなら、目標金額を達成するにあたり、必要となる利回りを低く抑えることが出来、それによりリスクを取らなくて済むようになるのは勿論ですが、そもそも損失が出る可能性を下げることが出来ます

他のサイトからの引用で恐縮ですが、このサイトを見て下さい。株式投資の利回りの推移を示したグラフが示されています。10年投資では3.5%の損失になりえることを示していますが、20年投資では4.4%以上の利回りであることが過去のデータから分かります。つまり、いつ投資を始めたとしても20年間投資をすれば、損をしなかった、ということを示しています。そして、平均的な利回りはどの機関であっても11%前後で変わらなかった、という事も分かりますから、長期間投資が有効であることが分かります。

利回り

利回りは「資産割合」から期待値を計算することが出来ます。「許容リスクの割合と資産割合の決定」の章を再度確認して、計算をしてみて下さい。

想定到達額

元手・投資期間・利回りが確定したら、到達額をざっくり計算することが出来ます。ここではそれを想定到達額と便宜的に呼んでいます。

さて、計算方法ですが、方法はいくつかありますが、ウェブで提供されているアプリを使うのが手っ取り早いです。例えば、楽天証券は毎月の積立額と投資期間から、目標額に到達するのに必要な利回りを計算してくれる計算サービスを提供しています。ありがたく使わせて頂きましょう。ここに、元手の所で算出した平均月額の費用と運用期間、利回りから到達額を計算出来ます。

実際の運用

実際の運用については、「初めに決めたルールを愚直に守ること」が運用を正しく実施するコツとなります。人間の判断を入れることにより、収益率は悪化することが多いため、最初に決めたルールを守り続ける意志は非常に重要です。

それではどういったルールで以て運用をするべきなのでしょうか?それは「常に許容されたリスク以内にリスクを抑制し続けること」がとるべき運用方針であると言われています。それを実現する方法がリバランスであるともいえます。

それでは、投資初心者はどの程度リバランスに力を入れれば良いのでしょうか?説はいくつかありますが、四半期に一度、というのを推奨しています。というのも、3か月程度あれば、株の暴落もあるでしょうから、その下落相場に対応することが出来ます。リバランスの実施により、「相対的に利益の出ている資産を売却し、割安な資産を購入する」ことになるため、下落相場におけるリバランスは、以降の収益を考えると重要であると言えます。すなわち、そういった「荒れ相場」には、リバランスなどは必要だという立場で説明しています。

リバランスの作業自体は簡単で、自分が設定した資産割合になる様に、余剰資産を売却し、過小資産を購入するだけ、です。勿論、運用の状況を見て、資産割合は見直すことが可能です。考えが変わった、状況が変わった、年を経てリスクが取れなくなった…など色々と状況が変化します。柔軟に対応していきましょう

利益確定

目的が明確になっている場合、利益確定は非常に重要です。利益確定として現金化した段階で、リスクは0になりますから、目的がある投資では外すことは出来ないポイントでしょう。

人間の心理として、更なる利益を追及しがちですが、目的がある投資においてはこういった考えは適切ではありません。目的の重要度に応じて、「全額を利確」「一部を利確」「許容リスクを下げ、継続運用」「継続運用」から選択しなければいけません。

なお、リスク資産で保有している限りは、暴落により株価が半減することを覚悟しなければならず、株価の復活に数年は見込まないといけないため、5年以内に必要な資金であれば、利益確定するのが安全でしょう。

この辺りは緻密に考えていく必要がありますが、個々論になってしまうため、ここでは省略します。

おわりに

投資初心者に向けて、投資のやり方を紹介しました。投資をするにあたり、知っていると見通しが良くなるであろうことをまとめて、「やり方ガイド」として、この記事で紹介しました。

この記事で、投資の考え方・やり方の概要を理解して頂けたら嬉しいです。ただ、投資自体は不確かなところも多く、自己責任の世界でもありますので、この記事の内容をきっかけにリスクについても考えた上で、投資の世界を見るのが良いでしょう。この記事が皆様の参考になったのであれば幸いです。

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