考え方 資産運用

適正なキャッシュポジションの計算方法:非リスク資産の比率と基準

こんな方におすすめ

  • 投資における損失の考え方を知りたい方
  • 非リスク資産(現金)の保有比率について、考え方や計算方法を知りたい方

はじめに

投資において、最大の問題は元本割れ、すなわち損失でしょう。人間は「利益よりも損失を嫌がる」とどこかで聞いた記憶がありますが、実際のところ「得する方法」以上に「損しない方法」が注目されていると思います。実際、自分も投資初期の段階では、含み損で少し考えさせられました。

一方で、損失は「事前に分かっていれば許容可能」なことも多いと思います。あまり良い例えではありませんが、賭け事なんかはそういった感じですよね。

そうなると、投資を実施する場合においても、損失をどう考えるか?というのは非常に重要です。しかしながら、こういった情報は、色々と資料やウェブを読んでいても、中々得られないもので、実際に自分で考えを積み重ねるべきだと考えさせられました。

そこで、この記事では、データに基づき、どの様な投資行動を取るかを考察し、一定の結論を得ましたので、公開します。これにより、「投資の損失は最大全額」から脱却し、より投資に積極的になれるのではないかと考えていて、皆さんの投資行動に良い変化があれば幸いです。

なお、もし時価という考え方に慣れていないのであれば、投資を本格的に始める前に、時価評価になれておく必要があるでしょう。目先の評価ではなく、長期的な評価に立てるようになることが、投資家としての一歩だと個人的には考えますが、そう言った考え方にはあまり出会わない気がします。個人的には、時価評価になれるために、債券に小額投資して、感覚を養う、というのは十分にありな選択肢だと考えていて、そういった記事を過去に書きました。興味があれば、参考にして下さい。

参考投資初心者に積立NISAで少額の国内債券購入をおすすめする理由

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覚悟すべき損失はどれくらいか?

損失が見積れない原因

損失が見積れない原因として言えるのは、根本的ではあるのですが、金融資産が「どの程度損する可能性があるのか?」について、しっかり把握できていないことにあります。

勿論、未来は誰にも読めませんから、完全な予想は不可能です。しかしながら、投資行動が人間によって取られるのが大多数である以上、これまでの歴史に学ぶことは可能です。過去に学び、「被る可能性のある損失」を把握しておくことは、投資にとって必要があることでしょう。勿論、すべて過去の統計や事実に基づく、予想値でしかありませんから、最終的には自分の立場に応じて判断する必要があることを忘れてはいけません。

どの資産で検討すべきか

資産を額面的に損をする可能性のある「リスク資産」と、損はしない「非リスク資産」に分けたとします。その時、リスク資産として代表すべきはどの資産でしょうか?

今回の目的は「どのくらい損失を被る可能性があるか」といった議論のために用いる数値ですから、まずは損失が最も大きくなる可能性がある資産で代表するのが良いでしょう。となると、最も変動する資産が適切ということになります。流動性が高く、時価を確認出来、変動がそれなりに大きい資産といえば、そうです、株式ですね。実際株式の値動きは債券の何倍も動く一方、利益も大きく期待できるのが株式の特徴です。

ということで、今回の検討では最もリスクの大きい株式で考えていくことにします。

株式の変動量

とはいったものの、変動量をどのように考えるべきでしょうか?過去すべての期間において、どの程度値動きがあったかを追えばよいのでしょうか?

今考えているのは、どの程度損失を被るかですから、上昇量は気にせず、下落量のみを気にすればよいでしょう。勿論、機会損失という意味では、値上がりも損失といえるのですが、元本割れしていないという意味では、損失を回避出来たともいえるので、この場では考えるのをやめましょう。

また、今気にすべきは、「被りうる損失」の中でも「リスクとして考えおくべき損失」であり、実質それは「被りうる最大の損失」であると考えるべきです。「統計的に平均化された変化量や下落量」ではなく、「起こりうる中でもっとも大きい下落量」を考えるべき、ということです。そして、株の損失は株価の下落により引き起こされる物が殆どでしょう。こう考えると、不景気になった時期の株価を調べると何となく傾向の予想が付きそうだと察しがつきます。

直近の不況といえば、コロナショックが思い当たります。また、リーマンショックも大きなインパクトがありました。そういった過去の不景気付近の株価の暴落を見ていけば、今回の目的を達成できそうです。以前に暴落を調べた所、リーマンショックにより「50%程度の損失」が起きていました。もっと前の世界恐慌の時は75%程度落ちていた様です。ただ、世界恐慌時に比べて、金融システムも洗練され、国や各国の中央銀行も経験を積んでいます。ですから、そこまでひどい暴落は起きないだろう、と予想しています。ですから、リーマンショックの時の「50%の損失」は十分な覚悟だと結論付けました。

株価の暴落の調査については、記事にもしています。宜しければ確認して下さい。

参考投資のリスクを理解する:これまでの株の暴落を再確認してみた

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非リスク資産の保有比率の計算方法

対象とすべき資産について

ここから非リスク資産の比率について検討を進めたいと思いますが、その前に一点注意点です。

ここでは「運用に回してよい資産の中での非リスク資産」に焦点を当てます。このように注意を書いているのは、生活費や準生活費を資産の中に入れてしまう人がいるからです。基本的に生活費は投資に回すことが許されない資産であり、非リスク資産で保有することが基本です。ただし、必要になるのが相当先になることが明確であり、リスクが抑えられている場合に限り、運用に回すことも可能かもしれません。この例としては、子供の学費が良い例でしょう。逆に数か月先までの生活費については、投資に回すべきではないかもしれません。これについては折を見て、解説記事を書きたいと考えてます。

この様に、「資産運用可能な資産」を明確にしました。その意図とは、「すぐに必要にならない資産」であることを明確化したい、というものです。つまり、「景気は変動する」ので、「必要な時に現金化出来るとは限らない」訳です。現金化は、出来れば含み益が一時的にでも最大(つまり極大)な時に実施したいわけで、その程度の余裕は欲しい、というのが運用上の一つの課題となります。生活費を十分に確保しておくことで、現金化のタイミングが自由になり、より効率的な運用が可能となります。

それでは、「資産運用可能な資産」の内、何パーセントを現金で持つべきか、検討をしてきましょう。考え方はいくつかあるはずですが、今回は「簡易法」と「リスク許容度から決定する方法」の二つを紹介したいと思います。個人的なおすすめは後者の「リスク許容度から決定する方法」ですが、リスクを踏まえた上で、個々人が納得出来ればOKなので、最終的には自分で決めて頂いて構いません。

簡易な方法:年齢で比率を決める

最も安直な方法としては、年齢で非リスク資産、即ち現金の比率を決める、というものです。もしくは、無リスク資産の範囲を拡大し、「低リスク資産」を年齢パーセントの比率だけ保有する、ということになります。

具体的に言うと、30歳の人であれば、現金保有率を30%にする、というもので、残りの70%は株式などのリスク資産で運用する、ということを意味します。

正直、これについては広く言われてはいますが、理論的な理由には乏しいと感じます。なぜなら、リスク許容度は収入や資産によっても変わるので、それらを一緒に考えているからです。ただ、この方法で算出される許容度は割と保守的に出る気がしていて、多くの面で参考になる印象です。

もし、これまでリスクについて、特に考えていなかったのであれば、この年齢パーセントの保有比率というのは一つの大きな参考になるでしょう。

おすすめ:リスク許容度から決める

二つ目の方法はリスク許容度から決める方法です。リスク許容度とは、自分が受け入れることの出来るリスクを意味する言葉ですが、非常に曖昧で分かりづらい言葉です。

そこで、リスク許容度の尺度として、「自分が許容出来る最大損失」を考えてみるのが分かりやすいです。例えば、自分が100万円を投資するとして、50万円に減ることが許容出来る場合、「50%の損失を許容可能」という事になります。

上記の「許容可能な損失」からどの様に資産比率を決めれば良いのでしょうか?そのためには、株がどの程度、値下がりしうるかを知らなければなりません。結論から言うと、株は半値になりうる、とだけ理解して貰えれば概ね良いです。世界恐慌クラスであれば、4分の1の価格にまで落ちましたが、リーマンショックでは2分の1の価格にまで落ちる程度でしたから、一般的には2分の1が基準となるでしょう。

株価が2分の1になりうる、という前提に立てば、リスク資産の比率を求める計算式は「許容可能な損失(パーセント)×2」となります。つまり、資産の20%減ることを許容するのであれば、リスク資産は40%まで保有して良い、ということです。もし、50%減ることを許容するのであれば、全部リスク資産で保有しても良い、ということです。

なお、50%以上の許容は、レバレッジをかけることを許容する、という意味にも解釈が可能ですが、個人的にはおすすめしません。レバレッジをかける場合、最悪元本以上の損失が出て、借金を背負う可能性があるため、万人向けの投資法とは流石に言えません。実施する場合には、リスクを精査するのを忘れないようにすべきです。

非リスク資産とリバランスの関係:キャッシュポジションの重要性

これまでの議論により、キャッシュポジションの取り方、即ち現金比率について明らかにしてきました。問題は、この結論をどの様に利用していくか、利用されていくか、です。

以前に利確の考え方について考察したことがあります。個人的には「一般投資家、債券不要論」の立場を取っていて、その立場で利益確定を論じつつ、ズレてしまった金融資産の比率を元の資産比率に戻すリバランスが利益確定行為であることを説明しています。

参考利確とリバランスとキャッシュポジションと:資産移動行動を考察する

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結局、投資資金の比率(ポートフォリオ)に現金を組み込み、定期的にリバランスすることで、リスクを一定に保ちつつ、利益確定を実施することが出来ます。また、株価が暴落したときにリバランスを実施することで、安価に金融資産を調達することが出来、株価が回復したときに十分な利益を取ることが出来ます。すなわち、安定運用と高利回り実現のために「リバランス」が重要な働きを示します

ここで重要なのは、リバランスにより、利益確定や利益の仕込みを実施することが本質ではない、ということです。重要なのは、リバランスにより「リスクを元の想定に戻すこと」が出来る点です。つまり、「自分の抱えられるリスクに抑える」ために、資産の配分を基に戻すわけです。元々、損失を嫌って、リスク管理を実施する!という方針で投資比率を決めているわけですから、定期的にその比率に戻す必要がある、というのは合理的な判断でしょう。もし、戻さないのであれば、それは「投資の前提を修正した」ということでもあるわけです。

ここで問題となるのは、リバランスの頻度です。頻度については諸説あり、自分でも意見は固まっていないところですが、個人的には四半期ごとのリバランス、を推奨しています。というのも、株価の暴落は3か月程度で見えてくることが多いので、四半期に一回程度しておけば、株価の暴落局面で一度は資産比率を修正できるからです。リバランスの戦略については色々とありますから、個々人の考えでもって、実施して良いのですが、一般投資家であれば、これくらいの距離感で良いという結論が自分の中で出ています。

勿論、株価を見るのが大好きで、運用が大好きであれば、もっと細かい頻度で実施しても大丈夫です。自分の余力と、目的を勘案して、適切に実施するのが大切です。

おわりに

今回は、非リスク資産の比率の決定法から、キャッシュポジションの取り方や役割について説明してきました。投資はリスクの伴う行為ですが、こういった資産の適切な組み合わせによって、リスクを許容範囲に収め、適切な運用が行えるようになります。

確定拠出年金などで投資教育は広く行われていますが、このようなリスク管理の観点では、あまり良い説明がされていないと感じたため、今回の記事を執筆しました。

投資は自己責任ですが、こういった考え方を広く学ぶことで、リスク低減のお役に立てれば嬉しいです。

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