基礎知識 資産運用

自己格付けなソーシャルレンディングの概要とリスク

2021年5月8日

最近、新しい資産運用サービスが登場しています。また、金などのオルタナティブ資産へも注目があつまっています。これらを背景にして、株式・債券などの伝統的な資産以外への投資にも目が向けられています。

こういったことを背景に、今回、ソーシャルレンディングについて調べてみました。新規のサービスは胡散臭く感じる物です。そこで、サービスの仕組みを詳しく見て、実際に抱えているリスクなどを考えてみました。この記事を見れば、ソーシャルレンディングの概要が分かって、ざっくりとしたリスクを理解することが出来ると思います。

そこまで難しい話ではないので、読み物的に読んでみて下さい。それでは説明して行きます。

こんな方におすすめ

  • ソーシャルレンディングの概要を知りたい方

ソーシャルレンディングとは?

仕組み

ソーシャルレンディングは、「借手」と「貸手」を結び付け、融資の仲介を行うサービスのことです。サービスの提供はネットを通じて行い、低コストでサービス提供が出来ることが特徴です。

サービス提供の方法は、貸付型・ファンド型。オークション型やマーケット型などがあり、それぞれ特徴が異なります。

  • 貸付型・ファンド型:仲介会社が審査、融資条件、融資対象全てを決める
  • オークション型:借手が金利を入札し、それにより融資条件が決まる
  • マーケット型:仲介会社が格付けを実施し、融資条件も決定する

結局、貸手と借手をどのようにマッチングさせるか、という技術的な課題に対して、ネットサービスを使う、という解を出した結果がソーシャルレンディングだと考えられます。その上で、どこまで投資家に判断を委ねるかによって、運営形態が異なると理解すれば良いでしょう。

社会的意義

これまで、資金を得る方法は、銀行から融資して貰うか、中小企業ではサラリーマン金融で短期資金を借り入れたりするのがせいぜいだったはずです。大企業は社債も発行しやすかったはずですが、規模の小さい企業は事業資金の借り入れが大変だったはずです。

ソーシャルレンディングは、貸手と借手を直接つなぐことが出来るので、事業規模の大小を問わず、賛同者さえ居れば、融資を実施することが可能となりました。これは、社会的には大きな意義がある話でしょう。

ソーシャルレンディングのデメリットとメリット

デメリット

社会的には大きな意義もある所ですが、一方で、情報の非対称性により、投資家にとって、どうしても不利になりがちな所がデメリットであると言えます。

例えば、メガソーラー会社向けのソーシャルレンディングがあったとして、その会社のリリースする説明を理解することが出来るのか、という問題が生じます。確かに、決算書類などは、一般的な書式に則り、作成されるはずです。しかし、ソーシャルレンディングでの貸し出しは融資に近い性質を持つと考えるべきであり、事業の将来性判断は大切な要素であると言えます。従って、投資する側にもそれに見合う判断能力が必要となってきます。市場取引される物であれば、市場の他の参加者により妥当な値付けがされるため、大きな損はしづらいですが、自らに委ねられる点が最大のリスクとなります。

加えて、借り手は少しでも良い条件で借りたいため、必要最低限の情報しか提示しない可能性もあります。ですから、貸手に十分な情報が集まるとは限らず、貸手と借手で保有する情報が非対称になり、投資家側に不利となる可能性があるのが、デメリットと言えるでしょう。

メリット

まずは、上述した通り、社会的には意義がありますから、そういったSDG投資に惹かれている人にとっては一つメリットになりえます。

加えて、スクに応じた高利回りが何といっても魅力でしょう。そのリスクに釣り合うのかどうかは、投資家が個々のケースで判断すべきなので、一概には言えませんが、絶対値としては、非常に高い利回りが想定されます。

具体的には、SBI Social Lendingにおいて、5.5%~9.0%の利回りが想定されている案件が非常に多くあります。SBI Social Lendingの公式サイトにも、以下の通りの記載があります。

借手は少ない金利負担でお金を借りられる場所を求め、投資家はリスクを取る分利回りの良い資産運用を求めている。

[引用]SBI, ソーシャルレンディングとは

つまり、ソーシャルレンディングは、高リスク・高リターンを求める資産運用だ、ということです。ですから、「利回りを追究したい人」にとって、好ましい投資であると言えます。

それでは、ソーシャルレンディングはどういった本質を持つ投資手法なのでしょうか?以下で考えていきたいと思います。

ソーシャルレンディングの本質

ソーシャルレンディングの本質とは、以下の3つで構成されています。

1.債券投資

ソーシャルレンディングの本質の一つは債券である、ということです。債券とは、借金の証文のことですから、まさにその通りです。

債券投資ですから、相手の行動に対して、投資家が影響させることは一切出来ません。あくまでも借金の返済を促すことしか出来ません。一方、貸し出しではあるので、デフォルトにより借り手が倒産した場合、株式より優先的に返済がなされる期待はあります。ただ、この高利回りの貸し出しであれば、優先順位は相対的に低くなっているでしょうから、そういったリスクは念頭に置く必要があります。

2. 格付け行為

ソーシャルレンディングにおける利回りというのは、誰が決定しているのでしょうか?それは、オークション型では投資家本人が直接決定することになりますが、それ以外では仲介業者が決定することになります。つまり、ソーシャルレンディングを構成する重要要素として、格付けがあると言えます。つまり、格付け会社に頼らず「自己格付けをした債券」ということです。

仲介業者が決定する場合の流れは以下の通りです。

まず、仲介業者は、貸出先の候補を作成します。この候補は、仲介業者が独自に発掘しても良いですし、借手からの申し込みによるものかもしれません。そして、各候補毎に投資の適格を判断します。仲介業者の基準で投資に適すると判断された借手に対し、適正な利率を提案、相手が了承した段階で、ソーシャルレンディングとして募集を開始します。

この「投資適格の判断」と「利率の算定」という行為は、株式や債券でいう格付け行為と全く同一です。ですから、ソーシャルレンディングにおいて、仲介業者の果たす役割は非常に大きく、信頼や実績が大切ともいえます。

なお、オークション型の場合、格付けを行うのは、投資家本人になります。当然、投資家にも目利きが必要となりますから、投資の難易度は上がると考えた方が良いでしょう。

3. アクティブ運用

上記に示した通り、貸出先リストを作成するのは仲介業者であり、投資判断をするのは投資家自身です。ですから、仕組みとしては、アクティブ運用と非常に近しい物があります。

株式や債券のアクティブ運用では、株式や債券をファンドマネージャが選択して、売買します。投資家は、ファンドマネージャに対して投資をする、というわけです。

一方、ソーシャルレンディングでは、借手候補を仲介業者のマネージャが選択して、投資家が投資の判断を行います。リスクを踏まえた利回りの設計などは、マネージャである仲介業者の重要な仕事であり、投資先のパッケージングを仲介業者が実施しているとも言えます。そのパッケージを買うのか?というのは投資家が判断します。この多数の判断はアクティブ運用に見られる特有の物ですから、ソーシャルレンディングはアクティブ運用と考える方がしっくりきます。

ソーシャルレンディングは流行っているのか?

少なくても金融業界で、ソーシャルレンディングは流行りでしょう。現在、社会的に「ソーシャル」という物が広く、大きく評価されている世の中になっています。ですから、「ソーシャル」の名の付くサービスは、皆が検討しているでしょうし、今後もサービス展開がなされています。

ソーシャルレンディングは、サービスとしては良い物ではあると思います。社会的な意義として、銀行が投資を躊躇する状況ではあるものの、将来性がある事業というのは多数あります。そういった事業を救う目的でも、非常に良い試みではないかと感じます。

ソーシャルレンディングは投資先としておすすめなのか?

ソーシャルレンディングはリスク相応の金融商品です。債券投資という言葉から受ける印象程リスクは低くありません。5%以上の高利回りの金融商品としては、こういったリスクを当然背負うだろう、といった具合です。

一般的な株式投資においては、将来が見通せないことによる株価の市場変動リスクを負うことになります。ただ、上場企業には、それまでの実績もありますし、情報も相応に公開されていますから、判断をする材料というのは豊富にそろっています。あとは、未確定である将来に対して、どういった判断を下すか?ということです。

一方で、ソーシャルレンディングにおいては、投資先の情報公開が限定的なことが多い様ですし、そもそも上場企業と同様の管理体制があるという保証はありません。管理体制を厳密化するとコストがかかり、収益を悪化しますが、リスクという観点では、ある程度の管理があった方が判断が容易となります。

ソーシャルレンディングに自分が投資するなら、という前提でいえば、まずオークション型は選ばないでしょう。目利きをするだけの余裕と知識は恐らくないと予想するからです。マーケット型もしくはファンド型のどちらでも良いですが、自分の投資資金の5%未満で運用すると思います。

なお、個人的な見解にはなりますが、どちらかといえば、プライベートエクイティ(PE)と呼ばれる未公開株にその性質は近いと思います。ですから、「未公開株よりリスクが低く、利回りが割と良い運用方法」という様に、自分では認識しています。少なくても、債券と考えるよりは実態に近いと思いますので、参考にして下さい。

おわりに

今回は、ソーシャルレンディングの仕組みと、リスクについて考えてみました。ソーシャルレンディングは最近よく聞く投資手法ですが、特有のリスクがある手法になるので、事前にしっかりと確認すべきでしょう。

個人的には、社会的な価値は十分にあると考えています。ですから、健全な盛り上がり方を期待している投資手法です。投資についても、これらを踏まえて、考えていきたいと思っています。

この記事のポイントは以下の通りでした。

ポイント

  • ソーシャルレンディングはアクティブ運用の債券に近い性質を持つ。
  • 利回りは高いが、リスク相応と言える。
  • ソーシャルレンディングの成果は仲介する会社の目利きに依存するため、仲介会社選択も重要である。

今回の記事が、リスクのある投資について、考えるヒントになれば、嬉しいです。

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