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【銘柄分析】ANSYS(ANSS):統合シミュレータ大手

2021年5月21日

アメリカのEDAツールベンダーで、米国のNASDAQに上場しているアンシス(ANSYS Inc., 銘柄コード:SNSS)について、企業分析をしました。

個別銘柄売買の参考として下さい。

本記事の内容は、執筆当時の筆者独自の見解に基づくものです。投資の際には、内容の精査の上、自己責任での実施をお願い致します。

シノプシス(SNPS)の概要

アンシス(ANSYS Inc.、銘柄コード:ANSS)は、様々な分野のシミュレータを開発・販売しているソフトウェア企業です。

アンシスのソフトウェアというと、高周波3次元電磁界解析ソフトウェアで、日本ではサイバーネットが取り扱いをしているHFSSが有名です。このソフトウェアは電磁界シミュレータと呼ばれ、目に見えない電磁波(要は電波)の強さなどを計算する際に必須の物です。アンシスは完全な3次元シミュレータとして、圧倒的な知名度を誇っています。これは、製品ポートフォリオでいう所の「ハイテク」に相当する部分です。

アンシスの製品ポートフォリオの他の製品では、「自動車産業」といったあたりが注目です。自動車産業においては、設計・製造・動作を横断したシミュレーションをソリューションとして提示しています。近年の電動化・電気化を反映し、電気および機械の統合シミュレーションを提供しています。

総じて、製品としては優秀で、アンシスのソフトウェアなしには設計難易度が上がる分野も多い、という印象です。十分に地盤を確保している企業でしょう。

分野(セクター)と業績

事業分野としては、半導体製品設計のためのソフトウェアの開発、販売、サポートが主です。

まずは、株価とPERをmacrotrends.netのANSSのページから確認してみましょう。

株価自体は概ね右肩上がりです。2021年現在としては、若干PERとしては、60前後の値を取っており、若干割高にも見えます。ただ、2009年頃のリーマンショック付近でも黒字です。これは、景気に依存しづらい顧客を得ている、ということを意味しているでしょう。

次にseekingalpha.comよりANSSの配当について、確認すると、データがありません。配当は出していない、ということですね。

競合他社

ANSYSの強豪となる企業は、個々のツールでは結構あります。例えば、半導体の開発に使われる電磁界解析ソフトウェアとしては、KeySight TechnologyのMomemtumやEMPro、ソネット社のSONNETなどが知られています。

ただ、MomemtumもSONNETも2.5次元と呼ばれる簡易的なモデルに基づいたシミュレータです。また、EMProもHFSSには未だ及んでいない印象でもあります。そして、これらシミュレータは「単体のシミュレータ」であり、ANSYSの目標としている「統合シミュレータ」ではありません。

勿論、安価なシミュレータを提供する企業も存在します。しかし、計算精度・計算速度の観点で、ANSYSは一歩先を行く様です。

上記の様な背景により、各要素のシミュレータでは競合が存在するものの、統合シミュレータという観点では、ANSYSが一歩先を行っていると言って良さそうです。

将来性

ANSYSのリリースしている電磁波解析シミュレータは確かに高精度であり、他の追随を許していないと言えます。この電磁界解析ソフトウェアは、5G/6Gにも活用されるであろう、重要ソフトウェアであり、今後の5G/6Gの発展に向け、活用が見込まれる点で将来性は高いです。また、統合シミュレータが実現できる場合、電気回路の発熱による影響を見積もれるため、顧客の商品の設計品質向上に貢献できるでしょう。

今後はAI(人工知能)やML(機械学習)をシミュレーションに生かしていくことも考えていたり、シミュレーションの高速化を含めたスケーラビリティの向上にも注力しています。

事業上のリスクやその状況について

ANSYSとしては、顧客からの信頼に基づき「高い参入障壁」を実現する、と主張しています。これは、守りの戦略であり、現在のシェアを維持するための戦略と取れます。。

将来性の欄でも言及しましたが、ANSYSのシミュレータは「真のシミュレーションプラットフォーム」を目指しています。これは、多くのシミュレータを統合する、ということを目的にしていると読めます。しかし、本当にそれを顧客が求めているのか?というのは、事業場のリスクであると言えます。

統合シミュレータは、原理的には難しくないのですが、技術的なハードルは結構高いです。例えば、熱解析と電気回路と電磁波のシミュレーションを統合しようとすると、「電気回路で発生した熱を熱解析で伝搬させて、影響を受けた回路の動作を変更し、発している電磁波を修正する」といった依存関係まで解決する必要があります。しかし、熱伝搬解析と電磁波解析とで、時間刻みが大きく異なるため、シミュレーションのサンプル数が爆発し、計算時間が激増することになります。ですから、計算を省略する技術が必要ですが、そこまでしてまで、この解析手法が顧客に求められているのか?というのは少し疑問になってきます。

ANSYSとしては、「最高のシミュレーションプラットフォーム提供者」になりたい、という意思を感じる資料を出しており、技術畑の人間としては、理解をします。しかし、ビジネスで考えると、中々リスクがある様にと感じます。結局、各要素のシミュレーションは概ね完成している、ということで、統合によるメリットが押し出せるか?というのが、判断の分かれ目でしょう。

投資先としてはどうか?

統合シミュレータは兎も角として、現在リリースされている個々のシミュレータについては、販売も好調ですし、今後も継続した販売が見込まれます。例えば、電磁波解析については、5G/6Gの開発において、大きな役割を果たすでしょう。そういった観点では、ANSYSは5G銘柄であり、そこに魅力があれば、買いの判断になります。

R&Dへの投資は積極的に行っており、年々増加をしているようです。全てのシミュレーションを統合し、AIやMLでサポートしていくのが設計の基本方針になる、と考えるのであれば、製品開発の方向性の側面からも買いと判断できます。逆に、これらに反対するのであれば、買うべきではありません。

なお、個人的な見解としては、長期的には買いではあるが、現在は割高水準であり、判断に悩む所、という見解です。あくまで個人的な意見ですので、参考に留めて下さい。

総括

今回はアメリカのEDAツールベンダーであるアンシスを紹介しました。

アンシスについて、長所と短所を一言でまとめると以下のようになります。

ココが強い

様々な設計をサポートするシミュレータの大手

ココに注意

個々のシミュレータは概ね完成しており、今後の展望が不透明な点

今回の記事が、投資の判断の参考になれば嬉しいです。

 

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