考え方 資産運用

個別銘柄投資のすすめ:選定の基礎

こんな方におすすめ

  • 個別銘柄投資の時にチェックすべき事項を知っておきたい方
  • 個別銘柄投資の基準を知りたい方

はじめに

前回執筆した「個別銘柄投資の概要編」の続きです。

実際に個別銘柄投資において、どのような基準で投資していくべきか、財務諸表の観点で最低限をチェックしていきましょう。

参考個別銘柄投資のすすめ:概要編

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保有すべき銘柄の基準

個別銘柄を買う場合、何を基準として選ぶのが良いのでしょうか?

人によって、様々な答えが返ってくるはずですが、こと金銭面においてだけ言えば「将来性のある企業」に尽きるでしょう。勿論、最近はSDGs投資など、そういった基準で投資を行う人もいるそうですが、利潤のみを追求するのであれば、まずは「金銭的な将来性」に着目するはずです。

この場合の、「将来性」とは、人によって微妙に違うことがあります。例えば、「将来に渡って株価が上がることが将来性だ」と主張する人もいれば、「増配を繰り返すことが将来性だ」と主張する人もいます。人によって企業に求めることは様々なので、将来性の定義が違っても良いわけです。

ただ、この将来性の見方については、一定の示唆を与えてくれます。それは、「投資をする際に何を望んで、その銘柄を買うのか?」については、考えておく必要がある、ということです。配当目的なのか、株価の上昇目的なのか、はたまた企業を応援するのが目的で利益は二の次なのか…。そういった立ち位置については、購入時に明らかにしておきたい事項です。それによって、銘柄選定が明確になりますし、何より、投資を失敗した際にも糧になりますから、次に生かすことが出来ます。

個別銘柄投資の際に確認すべき事項

個別銘柄に投資をする際には、将来性が大切である、という話をしました。それでは、将来性はどこに現れるのでしょうか?

製品や事業戦略にも勿論現れるのですが、過去の動向については、各企業の財務諸表にも表れてきます。逆に言えば、財務諸表を確認すれば、過去の判断については概ね成否が確認できるわけです。そして、過去のデータを持って、将来性と捉えることも出来なくはありませんから、財務諸表などのチェックにより、銘柄を選定する方法は一定の効果がありそうです。

ただ、財務諸表などのIR情報を全て精査するのは中々困難なので、これくらいは確認した方が良い、という指標などを紹介しておきます。

事業分野(セクター)

事業分野は真っ先に確認しておくべき事項です。

これ自体は指標ではありませんが、「社会受けの悪い分野」「景気動向に敏感な分野」「全体的に成長している分野」など、事業分野を見るだけでもある程度動向が見えてくるものです。

株価純資産倍率(PBR:Price Book-value Ratio)

PBRは、株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍の価格になっているかを示す指標です。会社には解散価値と呼ばれる指標がありますが、解散価値とはPBR=1倍を意味しています。

PBRが1より小さい場合、その企業は解散価値を下回った株価なわけで、割安と判断されます。逆に、値が大きい場合、割高と判断されます。

株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)

PERは株価が一株当たり当期純利益の何倍になっているかを示す指標です。これも割安さを示す指標ですが、利益を基準として、割安さを判断する指標になっています。なお、「いくつの値以下なら割安」のような指標はありませんから、推移や相対比較のデータとして使うのが正しいでしょう。

将来が期待されている企業の場合、将来の株価や収益を先取りするため、PERは高くなる傾向にありますから、他の人がどのように将来性を判断しているかの指標として利用するのも悪くないでしょう。

配当金推移とポリシー

配当金推移はその名の通り、配当金の過去の推移です。配当金狙いの通しの場合、毎年安定し配当しているか、増配しているか、といった情報は非常に重要となりますので、確認すると良いでしょう。

また、配当金の分配ポリシーともいうべき、方針を提示している企業もあります。配当金狙い投資の場合は、各企業の出しているIR情報から、配当金に対する考え方を確認してもよいでしょう。

営業利益率

営業利益率は「売上高に対する営業利益の割合」を示します。これも業界によって値が大きく異なるため、同一分野の相対比較に使うのが良い値です。

とはいえ、今後継続して事業を営んでいくことを考えると、営業利益率は高いに越したことはないでしょう。また、営業利益率が高い企業は、今後も安定・継続して、稼げることが期待出来ますから、事業の安定性を判断する上で確認するのも良いでしょう。

売上推移

成長している会社の場合、顧客は増え、販路は広がっていきます。その結果、売り上げは増加傾向になります。ですから、基本的には売り上げは伸び続けている、というのが大切です。逆の見方をすれば、売り上げが伸び悩んでいるという事は、会社に何か問題があるか、市場が飽和状態であり伸びる余地がない、ということでもあります。

ただ、飽和市場であったとしても、例えば十分なシェアを持って、市場から支持を受けてみれば、経営上は問題ないわけですから、考え方次第です。配当金狙いの投資であれば、選択肢に入る可能性もあります。

不祥事の有無

指標ではありませんが、不祥事については、確認しておくことがおすすめです。不祥事は、その会社の本質的な問題点を表していることが多く、不祥事が自分の考えから離れすぎているのであれば、その会社は自分にとって良い投資先とは言えないかもしれません。

企業に投資すれば必ず儲かるわけではない以上、損失になった時に納得が出来なければいけないでしょう。その時に、不祥事のことまで考えて、納得できるのか?というのが基準だと考えますから、不祥事には一度は目を通しておくことをお勧めします。

おわりに

個別銘柄投資で確認しておくべき財務諸表の項目などを紹介しました。

財務諸表は、他の企業との相対評価にせざるを得ない項目も多く、投資に当たっては、業績が好調な企業と比較するなど、多少の手間が必要となります。また、必ずしも、今回紹介した財務諸表群で良い結果である必要はなく、ある程度は分野などに依存する点でもあります。

それでも財務諸表を見ることで、より安心し、自信をもって、個別銘柄に投資出来るようになります。投資の際の判断材料にしてはいかがでしょうか。

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