資産運用をしていると、どれに投資するのか、どこに投資するのか、といった判断と選択が迫られることが多いです。この判断は選択肢が非常に多く、悩むことも多いでしょう。特に初心者の頃は、判断基準も少なく、選択するのがストレスにもなりかねません。
しかし、そういった判断をする際に、「出来る限り選択しない」という所に目を向けるのも一つの選択肢です。結果として分散投資が実現出来て、それにより初心者でもリスクを抑制していくことが可能となります。
この記事では、「選択をしないこと」について、説明していきます。それでは始めていきましょう。
こんな方におすすめ
- 投資とリスクの関係について検討している方
- 自分の投資方針を固めるためヒントを探している方
投資と選択
投資をする際に何をするのか?ということを考えてみます。すると、この背景には「選択」という行動が隠れていることに気が付きます。
どういうことかというと、投資をする場合の行動をまとめると、
- 投資する資産クラスを「選び」
- 投資地域を「選び」
- 購入する商品を「選ぶ」
ということです。つまり、選択が大きな役割を果たしています。そして、この選択の度にリスクが変化して行く、とざっくり表現することも出来るでしょう。では、どの様に考えていけば、「リスク」を抑えられるのか?それを考えていくことは、「リスク」と「利回り」をバランス良く調整するためには、必須なです。
投資手法や投資クラスのみしか考えられない場合について検討してみましょう。利回りを優先するなら、レバレッジを活用した短期取引を挙げるでしょう。例えば、FXであったり、信用取引であったりといった取引です。逆に安心を優先するならば、銀行の定期預金や、学資保険などの保険、あとは自国通貨の国債なども選択肢に上がるでしょう。
しかし、これらの選択肢しかない場合、中間となる答えがありません。高リスク・高利回りか低リスク・低利回りの二択になりがちです。そのため、先に述べたように、「リスクと利回りの調整」が重要となってきます。
そこを深堀するために、まずは「投資と資産運用の違い」についてみていきましょう。「投資」であれば、「リスクと利回りの調整」がしやすいので、まずはそこを見ていきましょう。
投資と資産運用の違い
資産運用と類似の用語に投資があります。この言葉は似て非なる用語でもあります。wikipediaに依れば、以下の様に説明されています。
資産運用とは…自身の持つ資産を貯蓄・投資し、効率的に資産を増やしていくこと。
(出典元:wikipedia, 「投資」「資産運用」の項目)
この定義によれば、投資とは資産運用のための手段である、とも解釈出来ます。投資をして、「資本を増加させること」で、最終的に自分の資産を増やす、ということです。逆に言うと、資産を投資しても、「資本を増加させない」のであれば、それは投資ではない、ということでもあります。
資本の増加、ということに焦点を当てると、明らかになることが一つあります。それは、短期取引の物は投資にはならない、ということです。二つの見方が挙げられます。まず、純粋な物理的な制限として、短期で生産能力を増加させることは難しい、ということです。工場を拡張するにも、人を雇用するにも、金銭だけではなく時間が必要です。ですから、数日程度では生産能力を増加出来ない以上、それは投資ではない、ということです。もう一つが、短期間の取引では、「あくまで資産同士を交換しているだけ」であり、そこに生産活動が入っていない、ということです。その結果、短期的な取引は、ほぼゼロサムゲームになるので、生産能力は増えていない、ということです。
階層とリスク
短期取引においては、ゼロサムゲームの様相を呈するということを説明しました。ゼロサムゲームとは、利益と損失の総和がゼロということです。つまり、「勝者」がいれば「敗者」も確実に存在する世界ですから、プレイヤーは常に「勝利のための判断」を迫られています。「判断」により、「行動を選択」していく訳です。しかし、ゼロサムゲームでは、刻々と変わる状況に応じて、「適切な判断を下す」という非常に大きなリスクを抱えることになります。デイトレードの場合は、リスクを下ろしてから休めるのでまだ良いのですが、それ以外の場合だと常に気を揉み続けることになります。
しかし、生産活動が入ることにより、プラスサムゲームへと変化できます。これにより、全員が得をする可能性が出てきます。これにより、「判断の階層を変化させる」選択肢が出てきます。「1社毎の判断をせずに、分野の将来性のみを判断」して、その分野の会社を全部買うといった、分散投資がその代表例です。会社より高い階層での判断にすることで、リスクを抑制しています。
これが初めに説明した「リスクと利回りの調整がしやすい」ということです。より上位の階層で判断をすることで、個々の状況判断をする必要がなくなり、結果としてリスクを抑制出来ている訳です。選択の単位が大きくなった、とも見えます。逆の見方をすると、「1社に絞らなかった(選択しなかった)」とも言えます。
ゼロサムゲームと選択しない投資
企業群に投資する場合、ゼロサムゲームでは困ってしまうことにお気付きでしょうか?なぜなら、ゼロサムゲームでは、投入した資金に応じて新しい価値が生産されないからです。投資するメリットがない、という事でもあります。
つまり、こういった「なるべく選択しない投資」をするための大前提は正しい意味での「投資」なのです。短期取引では成立しないし、経済成長は必須になってきます。ですから、「資産運用」と枠を広げずに、「投資」と明確にして、話を進めています。
それでは、もう少し具体的に、「選択しない投資」の実例を見ていきましょう。
分野買い
これは先ほど挙げた例の通りですが、具体例を考えていきましょう。例えば、今話題の半導体分野を例にすると、「インテル」に投資せず、「インテル」「AMD」「TSMC」など複数社に対して投資する、ということです。TSMCの様な製造系の利益が出るタイミングと、「AMD」の様な設計系の利益が出るタイミングは、減価償却などの問題もあり、若干差がありますから、そういった意味でもリスク分散になるでしょう。
この場合、「半導体分野は拡大を続ける」という判断であれば、分野買いをする、ということです。
一か国集中投資と世界分散投資
分野という考えで絞ることもありますが、投資国によって絞る、という選択肢もあります。そのため、おのずと「一か国集中投資」と「世界分散投資」という選択肢が出てきます。
「一か国集中投資」の場合は、通常「自国」と「アメリカ(米国)」のどちらかを選ぶ人が現在は多そうです。一時はBRICsでもてはやされていたので、新興国に集中投資した人もいるでしょう。世界分散投資はその逆です。世界の株式や債券をまんべんなく買っていきます。一国がダメでも、他の国がある、そういった考えで投資をする訳です。
今回の見方でいえば、「アメリカは経済成長し、かつ世界平均を上回る」と判断するのか「世界経済は成長する」とだけ判断するのかの違いとなります。
考えをどの様に生かすか?
現在は、アメリカの経済成長が著しい、という現状があります。米国株式の時価総額の伸びは、世界株式の時価総額の伸びを明らかに上回っており、米国株式への集中投資が高利回りである、という意見が多数見られます。確かに、世界株式に時価総額分散投資をしても、半分はアメリカなので、間違っているとは言えません。そして、アメリカは移民国家であるだけでなく、軍事大国でもあり、国家運営的には非常に大きい自由度を持っています。ですから、長期的にも伸びていくという予想は理解が出来ます。
ですが、選択をすることで、同時にリスクを抱えていく、という考えは常に持つべきです。特に市場参加者が「ある投資がすごい!」と思い始めた時、市場は過熱しがちです。ですから、そういった時にこそ、「全部を選択出来る選択肢」にも目を向けたら良いでしょう。
もちろん、「目を向けた結果、しなかった」というのであれば、それはそれで良い選択です。重要なのは、一度目を向け、検討した、ということです。そういった、細かい経験の積み重ねで、投資経験も向上していくと考えますから。
おわりに
資産運用の観点で最も重要なのはリスクですし、制御できるリスクは制御していくのが妥当と言えます。もちろん、利回りを追究している場合もあるので、必ずしも抑制する必要はありません。しかし、そういったリスクの制御方法というのは多く知っておくことに越したことはないでしょう。
この記事のポイントは以下の通りでした。
ポイント
- 投資はプラスサムゲームであり、全員が得をする可能性がある
- 投資対象を絞らないことで、リスクを抑制できる
- 複数の投資対象に目を向けることが大切
この記事が、自己責任である投資について、納得のできる行動が出来るヒントになれば嬉しいです。