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特定口座(源泉徴収なし)で受け取る配当の税務処理

金融商品の取引において、あなたはどんな口座を使っていますか?今は特定口座があるので、基本的には特定口座を使っている方が多いでしょう。この特定口座には、特定口座(源泉徴収なし)と特定口座(源泉徴収あり)の二つがあることはご存じだと思います。一般的には、源泉徴収ありは「源泉徴収がなされるため、事務作業的に負担が低い(=楽に運用出来る)」と言った観点でおすすめされることが多い様です。

しかし、実は、特定口座(源泉徴収なし)においても、源泉徴収がされるケースもあります。それが配当の受け取りです。そこで、特定口座(源泉徴収なし)に着目し、メリットを改めて整理の上、配当の受け取りについて、少し整理しました。この記事を読めば、特定口座(源泉徴収なし)のメリットと、若干紛らわしい配当の取り扱いについて、理解することが出来るでしょう。

それでは進めて行きましょう。

こんな方におすすめ

  • 特定口座(源泉徴収なし)のメリットがイマイチ分からない方
  • 特定口座(源泉徴収なし)の配当の税金がイマイチ分からない方

源泉徴収なしの特定口座のメリット

源泉徴収なしで特定口座を作ることにメリットがあります。それは、「配当に対する課税のタイミングを遅延出来る」ということです。

どういうことかというと、1月に出た売買益は、以下の様に徴収されます。

  • 源泉徴収ありの場合:利益から即座に源泉徴収されるため、1月に源泉徴収される。
  • 源泉徴収なしの場合:確定申告により確定してからのため、次の年に納税する

この税金をいつ支払うか?というタイミングは、運用益を追究する際には非常に重要です。1年間税金分だけ少ない元手で運用する、というのは、投資の原則から言えば、良くない状況であり、回避する様動くべきではあります。そういった観点で、源泉徴収なしの特定口座は、「利回りの追及をしている投資家向け」とも言えます。

その他のメリットとしては、給与所得者の特例が適用できる、という点があります。確定申告不要な条件を満たせば、確定申告を合法的にしなくてよい=該当する収入について課税されない、というロジックです。基準は20万円になりますが、厳密なことを言うと、ポイントカードの還元分とか、ふるさと納税の返礼品とかもこの枠内に入る気がするので、あまり頼らない方が良い気もします。詳細は、以下のリンクも参考にしてください。

国税庁, 給与所得者で確定申告が必要な人の条件

ということで、少なくても「源泉徴収なしの特定口座」を作成すること自体には意味がある、ということです。

源泉徴収なしの特定口座での配当の処理

あまり法制度を理解していないと、以下の疑問に当たることがあります。

  • 特定口座(源泉徴収有り)は確定申告は任意である(源泉徴収されているので脱税にはならない)。それでは、特定口座(源泉徴収なし)で受け取った配当金について、確定申告は必要なのだろうか?

これについて、以下の通り解説します。

確定申告不要という言葉について

確定申告不要という言葉には実は二つの意味があります。そして、文脈により、意味が異なったりします。

  1. 確定申告の書類を作って、税務署に出す行為をしなくてよい
  2. 確定申告の書類に記載しなくてよい(申告不要の意味)

前者は分かりやすく、確定申告という行為をしなくてもよい、ということですね。給与所得者で、年末調整などでなんとかなっているパターンではそうなるでしょう。

問題は後者です。確定申告において、申告したものは「損益が確定」される訳ですが、「確定した状態にしなくても良い(=書類に記載しなくて良い)」というのが「確定申告不要」ということの様です。この辺り、税制の実務についての感覚なので、厳密には理解できていませんが、そういった感じなのでしょう。

一部の配当は既に源泉徴収されている

今回の場合、配当金について、2番目の意味で確定申告しなければならないのか?ということが主題でした。結論から言えば、「上場株式の配当」であれば、手元に届く前の段階で源泉徴収されているので、実は特定口座や一般口座を問わず、納税がされています。ですので、「確定申告しなくても問題ない」気がします。

実際にそれについて確認をすると、「確定申告書等作成コーナー よくある質問」の「配当所得」の欄に説明が載っています。

国税庁, 確定申告書等作成コーナー よくある質問 配当所得 課税方法

これによると、

  • 上場株式については、確定申告をするかしないかの選択が可能
  • 選択の粒度は、「特定口座(源泉徴収あり)の場合は口座ごとに選択」、「それ以外の場合は支払いを受けるべき上場株式等の額ごとに選択」
  • 確定申告する場合には課税方式が選択できるが、配当所得全てについて、申告分離課税か総合課税を選択

となっています。ですから、「上場株式に限って言えば、すべての配当について、確定申告において、書類に記載する必要はない」ということが言えます。有利な時だけ申請すればよい、ということですね。

損益通算の際には確定申告必要

ただし、損益通算を行う場合には、確定申告をしないといけません。損益通算とは、株式や投資信託などの売買損益と配当の利益をまとめて利益を計算する方法です。「まとめて計算する」ということにより、全体として利益が出ていない場合には、課税を免除してくれますが、その一方で通算する場合にはすべての配当について確定申告が必要、というのは、上記で説明した通りです。

損益通算は一般的に「通算すると赤字になるケース」で用いられる制度ですから、そういったケースではお得になるケースが多いはずです。とはいえ、税金はケースバイケースな所がありますから、複数のケースで計算したり、税理士に相談しに行ったり、しっかりと確認が必要です。

特定口座(源泉徴収あり)がやっぱり楽

税金の手間を考えると、やっぱり特定口座(源泉徴収あり)が圧倒的に楽です。特に、あとで税金で文句を言われないことが保証されているのが良いですね。

デメリットがある人というのは、以下の条件に当てはまる人です:

  • 確定申告不要の条件に当てはまっていて、
  • 株式などの売買益が年間20万円以上

運用の仕方にも寄りますが、売買益が20万円、というのは、流石に超えてしまうのではないでしょうか?確かに、少額デイトレードであれば、超えない可能性もありますが、10年以上の長期積み立て投資、というのであれば、20万円というのは簡単に出てしまう利益ですから。具体的には、月1万円の積み立て投資で年利平均4%を10年運用で、27万円ほど利益が出る計算になります。大きな目的のために運用していたのであれば、一気に売却するでしょうから、簡単に20万円は超えてしまいます。この時に税金のことを気にしなくて済むのは非常に大きいメリットです。

もちろん、節税という観点でいえば、最適化の余地はあります。所得税と住民税の適用税制を変更したり、分離課税と総合課税、申告不要を使い分けたり…。これにより数パーセント程度は利益を改善出来るでしょう。ただ、この最適化は「源泉徴収の有無」には依らない最適化ですから、種別の選択に使うのはフェアではないでしょう。ただ、源泉徴収有りを選択することで、多少税金が多く取られたとしても「脱税」にはならないので、精神的な安心が得られるのは個人的には大きいと考えます。

あなたはどう考えますか?

おわりに

特定口座(源泉徴収なし)を選んだ場合で、配当がどのような扱いになるのか、備忘録として展開したくて、この記事を書きました。少額取引しかしないつもりで、「20万円を切るから源泉徴収なしで」と何も考えず申し込みし、結果として、確定申告に悩む羽目になった過去の反省も思い出しつつ、整理をしました。正直な所、税金の計算はケースバイケースも多いため、確実な実施のためには最寄りの税務署や税理士に相談することも選択肢に入れてもよいでしょう。

今回のポイントは以下の通りでした。

ポイント

  • 上場企業の配当金は必ず源泉徴収されているため、口座の種類に寄らず、確定申告しなくて良い
  • 特定口座(源泉徴収なし)では、税金の支払いを次の年度に行うことになるため、資金効率よく運用が可能である
  • 特定口座(源泉徴収あり)で損をするケースは意外と少ないとも言えるので、特定口座(源泉徴収あり)にすると楽は出来る

今回の記事が、あなたの糧になったのであれば、嬉しいです。

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