アメリカの半導体ファブ企業で、米国のNASDAQに上場したばかりのスカイウォーターテクノロジー(Skywater Technology inc、銘柄コード:SKYT)について、企業分析をしました。
個別銘柄売買の参考として下さい。
本記事の内容は、執筆当時の筆者独自の見解に基づくものです。投資の際には、内容の精査の上、自己責任での実施をお願い致します。
スカイウォーターテクノロジー(SKYT)の概要
スカイウォーターテクノロジー(Skywater Technology inc、銘柄コード:SKYT)は、半導体の製造を行っているファブレス企業です。製造拠点などをアメリカに持つ、アメリカ純国産なファブ企業でもあります。上場は米国のNASDAQです。
色々と半導体のファブは存在しますが、純粋にアメリカ資本な企業で他に思いつくのは、インテルぐらいですが、インテルは自社製品の製造が主なのが現状で、他の企業の設計した半導体製品を製造してくれる企業というのはなかったのが現状でした。こういった背景もあり、スカイウォーターテクノロジーはアメリカ政府からの期待も背負っている企業です。
また、スカイウォーターテクノロジー自体は既存のファブを追う立場であり、アグレッシブな戦略を取っている印象の企業です。例えば、半導体の製造に関して、Googleと組んで、開発用の設計環境をフリー化しようとしたり、そういった試みをしています。先端プロセスではないので、公開できる情報も多いのでしょう。オープン化により、顧客を増やしたいという意図があるのかと推察されます。
こういった、新しい試みをしている、比較的若いファブ、それがスカイウォーターテクノロジーという企業です。
分野(セクター)と業績
事業分野としては、半導体の製造です。
まずは、株価とPERをmacrotrends.netのSKYTのページから確認してみましょう。…と言いたいのですが、スカイウォーターは2021年4月21日初上場した企業であり、そこまでデータが揃っていません。株価などの比較は省略します。
次にseekingalpha.comよりSKYTの配当について、確認したいですが、こちらも同様ですね。上場直後なので、恐らく、調達資本は設備投資に回すでしょうから、配当については望み薄です。こちらもデータなし、ということで省略します。
競合他社
競合といえるのは、ファブビジネスを実施している企業です。スカイウォーターテクノロジーとしては、そこまで最先端の製造プロセスを扱っておらず、130nm世代と90nm世代まで、と言えます。この90nm世代というのは、2008年前後のプロセスですから、かなり古いプロセスです。実際、旧NECエレクトロニクスや旧富士通セミコンダクタでも製造できていたプロセスです。それでは、このプロセスの競合他社はどこなのかというと、ロジック向けのファブビジネスを行っている企業群です。例えばTSMCやSamsungです。
一方、製造可能なプロセスに関する情報は外部には中々出てこないので、推察にはなりますが、これら企業がいつまで古い製造プロセスを維持するのか?というのは、疑問な所があります。少なくても以前存在した、150nmプロセスや110nmプロセスは廃止している企業が多いでしょう。ですから、実は既に競合他社において、競合するプロセスが無くなっている可能もありますから、その点には注意が必要です。
将来性
アメリカ純国産のファブであり、アメリカ政府も優遇している雰囲気のある企業です。これは、将来性に期待をしてしまっても、仕方ないでしょう。投資の格言に「国策に売りなし」という言葉もありますし、現状、十分に投資先の検討対象となるでしょう。
ファブビジネスとして、Googleの様な純粋なIT企業と新しい試みをしているのは新しい所です。現在の半導体ビジネスは、製造のためのR&D費用が巨額なだけでなく、回路設計にも膨大な費用が掛かる、というのが現状です。PDKのオープン化(Googleは民主化と言っている様ですが)が達成できることで、製造を委託する側のコストは削減され、その低コストさが故に受注が出来る、そういったビジネスを描いている可能性はあります。区別化の戦略として非常に分かりやすいです。
また、割と古めの製造プロセスをターゲットとしていますが、3次元SoCや耐放射線半導体を製造するなど、民生用機器では求められないプロセスにも着手しています。これらの高付加価値プロセスの方向性を突き詰めるのもビジネスの方向として有りに思えます。
なお、スカイウォーターテクノロジーがターゲットにしている130nm~90nm程度の世代であれば、日本のルネサスエレクトロニクスも製造技術を維持しており、現在も製造中です。また、180nm程度であれば、エプソンの製造シャトルが少なくても以前はありました。この世代のプロセスは設備投資やR&D費用が安く済むため、新興企業が入りやすい世代でもあります。これらの状況を踏まえるに、130nm~90nmの製造プロセスをビジネス領域として選択したのは、絶妙であるともいえます。
現に、この世代のプロセスは中国の半導体企業の売れ筋ともいうべきプロセスの様で、中古の製造装置を中国企業が買い付けている、という記事を読んだ記憶もあります(2020年初頭ごろの話です)。
これらの状況を考えるに、当面の間、ビジネスは堅調に推移出来るのではないでしょうか?
事業上のリスクやその状況について
今後、どういった形で付加価値を付けていくのか?というのが重要ではないでしょうか?それは、プロセスノードの微細化を進めるのか、それ以外の面で高付加価値化するのか、ということです。
仮に先端プロセスに取り組む場合、ビジネス上の問題として、既に地位を確立している先端ファブであるTSMCやSamsungだけでなく、今後ファブビジネスに参入するであろうIntelなどと真っ向からぶつかることになります。
もちろん、技術的な問題もあります。例えば、65nmプロセスに参入する場合、high-kと呼ばれる技術が必要になる可能性があり、25nmプロセス付近でFin-FETの導入が必要となってくるだろう、と想像できます。これらの新規技術の導入は、各段階で大きな投資が必要となってきます。この投資に見合う顧客をTSMCなどから奪うことが出来るのか?というのも重要となってきます。
これらは大きな課題であって、事業の発展を制限する可能性があります。事業の発展上のリスクとして、理解しておくべきでしょう。
投資先としてはどうか?
まず、スカイウォーター上場したばかりの企業であり、市場の評価も固まっていないし、良い企業かどうかも分からない人も多いでしょう。
自分は、
- アメリカ政府が好印象を持っていること
- 米中の対立でこういったアメリカ国内ファブに資金が流れる予想があること
- ビジネス上の勝算も見込めること
- これまでとは違う、新しいことにチャレンジしようとしていること
などをプラスに評価しています。ですから、自分の評価は投資対象として高評価しています。
勿論、厳しい競争に晒されることを不安材料視して、マイナス評価するのも理解が出来ます。どの材料を重要視するか、という問題でもありますから、良く考える必要があります。
総括
今回はアメリカの半導体ファブ企業であるスカイウォーターテクノロジーを紹介しました。
スカイウォーターテクノロジーについて、長所と短所を一言でまとめると以下のようになります。
ココが強い
挑戦的な運営もする、アメリカ資本で作られた貴重なファブ企業
ココに注意
今後の事業展開の方法によっては利益が頭打ちになりうる点
今回の記事が、投資の判断の参考になれば嬉しいです。